「『嫌われる勇気』などでアドラー心理学という名前をよく聞くけれど、なぜ人気があるのだろう?」「私には役立つのかな?」「心理学って難しいイメージがあるけれど理解できるだろうか」と初めは感じますよね。
実はアドラー心理学はもともと人々の生活をより良く、暮らしやすいものにとの思いからアドラーが悩み抜きたどり着いた教え。当時もアドラーは人々に難しい理論ではなく、一人ひとりと対話しながらそれぞれが実践できる方法として伝えていました。
100年以上前の考えですが、今もなお廃れない、むしろ新しい心理学として世界中で注目を集めているすごい心理学。
あなたも、こんな考え方をしてもいいんだ!と驚く教えにきっとたくさん出会えます。
人との関わり方を常により良く、より人生を幸福なものに!と考える筆者が皆さんと同じ目線に立ってアドラー心理学について紹介します。
1.アドラー心理学とは
1.1.アドラー心理学について
アドラー心理学とは、オーストリアのウィーンの精神科医であるアルフレッド・アドラー(Alfred Adler)氏が提唱した心理学です。アドラー心理学は、「人は誰でも幸福になれる」ことを前提にしており、「人生には目的がある。幸せになるには勇気が必要」というテーマに基づき成り立っています。そのため、時を超えた現代でも、「幸せに生きるためにはどうしたらよいのか」と悩む人たちにヒントを与えてくれる実践的な心理学として注目されています。
1.2.アドラー心理学の生まれた背景
アルフレッド・アドラー(1870-1937)は、オーストリアのウィーン郊外でユダヤ系中産階級の家庭に生まれ、幼少期の病弱さ(くる病、肺炎)や弟の死を経験し、これらの経験から医師を志しました。ウィーン大学医学部卒業後、内科医を経て精神科医となり、フロイトの精神分析グループに参加しますが、フロイトの精神分析と対立します。
人間を「分割できない全体」として捉え、「目的論」と「自己決定性(Self-Determination)」を重視し、「劣等感」や「対人関係」が人の行動原理にあると解明することで、人はいつでも自分を変え、幸福になれるという希望を人々に与えるためでした。これは幼少期の健康体の彼と病弱な自身を比べ劣等感を感じていた過去も影響を与えたと考えられています。彼は、人が過去の経験(原因)に縛られるのではなく、未来の目的のために現在の行動を選択すると主張し、個人の主体的な力(勇気)を肯定したのです。
その後第一次世界大戦で 軍医として従軍し、共同体感覚の重要性を確信する契機となりました。
1.3.アドラー心理学が人気になった背景
アドラー心理学が広まった背景には、岸見一郎氏と古賀史健氏の共著である『嫌われる勇気』 のヒットが挙げられます。『嫌われる勇気』 は、2013年に書籍が出版された後、TVドラマ化され、幅広い世代に浸透していきました。
また、SNSの浸透もアドラー心理学の人気を後押ししています。SNSがコミュニケーションツールとして必須となった現代では、他人との比較や承認欲求が加速し、「自分らしさ」に疑問を持つ人が増えてきました。あらゆる方向への気遣いを配慮することが求められ、疲弊してしまった人たちが、自分とまっすぐ向き合う方法を探し始めたことも、アドラー心理学の注目度が高まった理由の一つだと言えるでしょう。アドラー心理学は、文明の発展により疲弊してしまった現代人への救いの手を差し伸べる学問として注目されているのです。
2.アドラー心理学の前提となる5つの理論
2.1.目的論
原因論が「過去の出来事によって感情が生み出され、その感情によって行動が生まれた」と唱えるのに対し、目的論とは「目的を叶えるためにその行動を選択した」と考える理論です。
例えば、「カッとなって怒る」人は誰に対してもそうなるわけではなく、自分より立場が弱い人に対して「相手を意のままに動かしたい」や「相手を変えたい」などの目的を叶えるためにその行動が為されたというのが挙げられます。
2.2.全体論
全体論において、フロイトが1個人を『無意識』と『本能』に分けて説明したのに対し、アドラーは意識と無意識を分けない『分割できない全体』として個人を捉えました。
全体論を元にした行動例として、「プレゼンで物怖じせずに堂々とパフォーマンスするために、メンタルを強くしたい場合に、心だけでなく、話すスキル(技)や体力(体)を改善する対策を実践する」が挙げられます。
2.3.認知論
認知論とは、人は誰でも自分だけの『色眼鏡(主観的な価値観・解釈)』を通して世界を見ており、客観的な事実をそのまま捉えることは出来ないということです。
アドラー心理学で取り上げられる劣等感もこの主観的解釈により生まれたものであり、例えば『背が低い』は客観的な事実ですが、『バカにされている』は主観的な解釈と捉えます。
2.4.対人関係論
対人関係論とは「すべての悩みは対人関係の悩み」であり、「すべての行動には相手役がいる」という考え方です。
2.5.自己決定性
自己決定性とは「自分のすべての行動は自分自身で決めることができる」という考え方です。自分ではコントロールできない悩みや課題があっても、「置かれた環境をどう捉え、どのように対応するのか決めるのは自分自身である」と捉え、主体性や独自性を持つことが大切だとしています。
3.アドラー心理学の特徴的な思想や概念
3.1.劣等感
アドラー心理学では、「劣等感」を持つことは悪いことではなく、「理想の自分に近づくために劣等感を利用する」ことを提唱しています。
3.2.課題の分離
他者が持っている課題と自分の課題を分離させることで、「これは他者の課題だ」と判断し、他者に介入しすぎないようになります。
3.3.勇気づけ
「劣等感」の克服に挫折してしまった場合にも、「困難を乗り越える活力を与えること」「困難に立ち向かうための精神的な能力を身につけること」といった勇気づけが効果的です。
3.4.共同体感覚
共同体感覚には「相手を無条件に信頼する」「そのままの自分を受け入れる」「他人の役に立つ行いをする」という3つの思想が重要だと言います。アドラーは「人はもともと誰かとつながりたいと切望する存在である」と考え、「共同体感覚を持つことが、自分の幸せにもつながる」と説いています。
3.5.ライフ・スタイル
アドラーは、ライフ・スタイルは「自分のことをどのように思うか(=自己概念)」「他人を含む世界の現状をどう思うか(=世界像)」「自分と世界についてどのような理想を抱いているのか(=自己理想)」といった要素を包括したものだと定義しています。
3.6.ライフタスク
①仕事の課題:労働を基軸とした対人関係
②交友の課題:仕事の場から離れた対人関係
③愛の課題:恋人、配偶者、親子など家族にまつわる対人関係
3.7.承認欲求
アドラー心理学における「承認欲求の否定」とは、「誰かの期待を満たすために生きてはいけない」という意味です。アドラーは、承認欲求は「良い行動をとったら褒める、悪い行動を取ったら罰する」という賞罰教育による産物だとして、批判的な態度をとっています。
4.アドラー心理学を学ぶメリット!
『人生における悩みを解決できる』『幸せになれる』
これに尽きるかなと思います。アドラー自身、「私の心理学は理学ではなく工学だ」と話しており、”所有の心理学”ではなく”使用の心理学”であることに深い意味を見出していました。そもそもが精神科医として従事していたアドラーが、患者や街の人々の悩みや苦しみをどうしたら軽くできるのかを考え抜いて生まれた心理学です。
アドラー心理学を学ぶことでそんな100年前の人々と同様、人生における悩みを減らすことができます。
自分でぐるぐる考えるだけで、解決に至らず八方ふさがりになってしまっている方にぜひ触れてほしい教えです。
私自身、両親の関係が悪く思い悩んだ時期がありました。また、私は両親に対して苦手意識を持っていました。
しかし、たどり着くまで時間はかかりましたが、『課題の分離』の考えで親の課題と私の課題とに分け、私の課題は解決に至ることができました。親との関わりで思い悩むことがなくなり、自分の人生に集中して向き合うことができるようになったと感じています。
また、個人的には是非どのアドラー本でも良いですので、『目的論』の項目を読んでみてほしいです。『親ガチャ』などの言葉が横行する中で、挑戦を諦めてしまう人はハッと気づかせられる考えなのではないかと感じます。
5.アドラー心理学を学ぶのにおすすめの本
5.1.アドラー心理学入門 岸見一郎
アドラー心理学といえばの岸見氏の著書。
アドラー心理学の要点が網羅されています。アドラーがどのような背景を持つ人物だったのか、アドラー心理学がどのようにして生まれたのかを知ることでアドラー心理学に対する誤解も生じづらいです。
5.2.アルフレッド・アドラー 人生に革命が起きる100の言葉 小倉広
「私はアドラーの本を最初から最後まで三回ほど読みました。火曜の朝、私は椅子から立ち上がりました。世界は違っていました…。アドラーは私に教えてくれました。『世界は信じがたいほどシンプルだ』と」
その言葉にたがうことない一冊を是非。
5.3.嫌われる勇気 古賀史健 岸見一郎
アドラー心理学を世に知らしめた一冊。ここから興味を持った、アドラー心理学を知った人も多いようです。内容がわかりやすくまとめられているというよりかは、対話形式になっているため読みやすく、自身がアドラー心理学を必要としているかどうかをこの本を通して判断できそうな一冊です。
5.4.超訳 アドラーの言葉 岩井俊憲
仕事、交友関係、恋愛・結婚などさまざまな場面におけるアドラーの言葉を168個にわたって読みやすく紹介しています。1項目自体の文章量は少ないのと、自分の読みたい・興味のある場面を選んで読むことが出来るので、アドラー心理学を俯瞰的に理解するというよりかは1場面ごとに実生活に落とし込んで実践してみたいという方におすすめ。
また、それぞれのアドラーの言葉の引用元が記載されているので、より詳しく知りたい場合はそれらをたどることもできます。
6.まとめ
アドラー心理学にぜひ触れてみてください。あなたの人生がより前向きに歩めるものになるよう心から願っています。

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